5
今日は日曜日。本当に彼女は来てくれるのだろうか。 ちょうど一週間前の花火大会で偶然出会った。ただそれだけ。 あーこんなことなら現場に戻るの少し遅れてもいいから 彼女の携帯を聞いておけばよかった。 ドタキャンなんてされたらきっと俺、花火大会一生恨むかもしれねえ。 彼女との約束の場所に俺はそんな思いで向かった。 それにしても今日は体が軽い。 シャツにジーパンというラフな格好がいかに楽かを身にしみてわかる。 ショーウィンドウ越しの自分の姿を確認すると先週の自分を思い出す。 あれはひどかった。 ビールよりもまずシャワーだったもんな。 だんだんと約束の場所に近づくにつれ、動機がひどくなってきた。 あー頼むから来てくれ。 「あ、よかった来てくれたんですね」 そこにつくと彼女が先に来ていた。よかった。 来てくれたんだ。しかも俺よりも早く。 はにかんだ笑顔の彼女がまぶしい。 ふわふわのスカートなんて間近で見たのはいつぶりだ? あー俺もっとしゃれこんでこればよかった。 「ごめんね。待たせただろ?」 「いいえ。あたしも今さっき来たところですから。 でも来てくれてほんとによかったです」 「それはこっちのセリフだよ。そんなおしゃれまでしてきてくれてさ」 「・・・お、おしゃれなんて・・・でもどんな格好でもあたし来ましたよ」 やべ。かわいい。 20歳とか言ってたけどぶっちゃけ高校生でも行けるかわいさだ。 俺も来たよと言い二人で顔を見合わせて笑う。 お茶でもしようかと喫茶店に向かった。 それにしてもこのかわいさは反則だろ。 華奢ではないけれどまさにふわふわしてる感じがする。 何で彼氏がいないんだろ? でも彼氏がいたら今、こうして俺とは会ってないんだし、 余計なことを考えるのはやめよう。 「じゃ、改めまして・・・これ俺の携帯です」 「あ、すいません。じゃ写させていただきます。 あたしからまたメール送りますね」 喫茶店でコーヒーを飲みながら番号交換をする。 彼女は自分の携帯に一生懸命番号とアドレスを打ち込んでいた。 その姿を見てまたかわいいなあと思う俺。ちょっと頭おかしいかもな。 「小日向さんは・・・」 「陽でいいよ」 「え?」 「長い苗字だし、呼びにくいだろ?俺もすずちゃんって呼んでいいかな?」 「は、はい。あ、陽さんでいいですか?」 やべ。彼女にそう呼ばれるだけで自分が陽でよかったと思っちまう。 俺、狂ってんな。 しかし、女の子に名前呼ばれただけでこんなに気持ちが高揚するなんて 俺、彼女の事好きなのか?いや好きだ。
side Suzu
|