「大丈夫ですか?」

「え?あ、はい」

「あ、あなたが気分悪くしている姿が見えたんで・・・」


俺は彼女の目線まで腰を下ろす。

俺の声に顔を上げた彼女はとてもかわいかった。

変な表現だけどそう思う。

目が大きくて肩までの髪が似合っている。

それにしても気分が悪そうだけど本当に大丈夫か?


「あ、移動しますか?ここも人多いでしょ?」

「いえ、友達が花火見てますから」

「気分は大丈夫ですか?」

「少しましになりました。ただ・・・音がちょっと」


彼女が俯きながらそう言うので俺は移動しましょうと彼女を起こした。

俺の腕につかまりながら立ち上がる彼女。

俺は周りを見渡し、どこか座れる場所を探す。

ちらちらと見ていると視界にベンチが入った。

花火は見れないけれどあそこなら今は人もいない。

俺はベンチを指差し、彼女を支えてそこに向かった。

      
「あの・・・仕事いいんですか?」

「君を一人にしてられないよ。ってのはかっこいいけど実は口実。座りたかったんだ俺も」


彼女をベンチまで連れていくと彼女がそう言う。やっと座れた。

本当は座りたいのが口実で君を一人にしてられないのが本当だったりするんだけど。

でも彼氏と来てたりしたらまずいよな。

こんなかわいい子が彼氏持ちじゃないわけないし。

さっき聞こえた声も彼女じゃないかもしれないしな


「彼氏に連絡しなくても大丈夫?」

「・・・友達と来たんです。彼氏なんていませんよあたし」


マジかよ?こんなかわいいのに。

まあ彼氏がいたら一人にするわけねえな。

でもその友達も白状だな。

彼女がしんどいのに自分達だけで花火見てさ。


「友達もひどいね。一緒にいてくれればいいのに」

「そんな。彼女たちは花火見たいと思いますから」

「優しいんだね。君は花火見れなくてほんとにいいの?」

「・・・いいんです。あたしは別に最初から来たかったわけじゃないですし。
友達に言われて来たって感じですから。
彼氏がいたら別だったかもしれないですけど」

「そっか。俺もそんなもんかな。彼女いないから出勤させられたってやつ」


俺のその言葉に彼女は目を丸くして驚く。

そんなに俺に彼女がいないってこと驚くことか?

まあそれはそれで嬉しいけど。

それから俺たちはなんだか親近感が沸いて話が弾んだ。

本当は彼女はいやいやここに来たことや、俺の会社の彼女特権。


「そういや、名前聞いてなかったよね?俺はこれ小日向陽。27です」


しばらく話してるうちに彼女の名前を知らなかったことに気付く。

俺は自分の胸の名札を見せながら自己紹介した。


「素敵な名前。本当に太陽がいっぱいって感じで」

「そうかな。俺はあんまり気にいらねえけど」

「素敵ですよ。あたしは設楽すず。20歳です」

「すずちゃんか。それこそかわいい名前じゃないか」


俺が彼女と話していると無線で呼び出しが入った。せっかくいいところだったのに。





  


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