「陽さんはおっさんじゃないよ」

「え?」

「素敵な人。あたしのほうがおばさんみたいでしょ?」


そう。あたしのほうがおばさんみたい。

だって陽さん本当に素敵なんだもん。

あたしなんておしゃれとかもほとんどしないものぐさ太郎。

あーこんなんじゃ陽さんとはつりあわないよ。


「かわいいよ。すずちゃんは。そうだこれからどうする?」


かわいくないって。え?これから?そんなこと考えてなかったよ。

陽さんはもう帰りたいのかな。あたしはもっと一緒にいたいけど、

嫌々連れまわしたくないし。でも・・・やっぱりまだ一緒にいたいよ。


「あの、行きたいところがあるんだけど行ってもいいかな?」


また勇気だして言ってみた。

用事があるって言われたらどうしよう。

あたしからメールしないと陽さんとは連絡取れないし、

でも断られたらもうメールできないよ。


「どこだって着いていきますよ。あ、でも・・・下着屋は・・・」

「え?あ、アハハハ。違いますよ」

「じゃあどこ?」

「それはないしょ」

「どこだ?ま、とりあえずここ出るか」


思ってもみなかった返しに驚いたけど笑っちゃった。

一緒にいてくれるんだ。

でも下着屋なんて行かないよ。

陽さんってかっこいいだけじゃなくってかわいい。

陽さんにお金を渡したのに遮られちゃった。おごってもらっちゃった。

それにしてもここ本当に花火大会があったところなのかな?

今はすごく殺風景でほんとに一週間前の人ごみがうそのように思える。

でも陽さんが声を掛けてくれたのは紛れもなくあの花火大会。

花火大会がなければあたしは陽さんとは出会ってなかったんだもんね。

お店の前に着く。いろんな音楽が聴こえてくる。ここはCDショップ。

あたしはここに来たかったんだ。

ほしいCDがあったのもあるけど陽さんがどんな音楽を聴くのか知りたかったから。





  

    side Akira