ほんとにしんどい。あーしんどいと思うなら来るんじゃなかった。

あたし後悔ばっかりしてるよ。

花火は見えないけどこうやってしゃがんでいるほうが楽だな。

あたしは輪を抜けて人ごみの少ないとこで座っていた。

ハンカチを口に当てていないと気分悪さが増しそう。

するとあたしの視界に人の足が見えた。

見るからに友達の足じゃないし。誰だろう。

そう思ったけれど顔は上げなかった。


「大丈夫ですか?」

「え?あ、はい」

「あ、あなたが気分悪くしている姿が見えたんで・・・」


声をかけられ顔を上げるとあたしの目線に合わせてしゃがんでいる人がいる。 

警備員さんだ。暑いのに長袖の服を着て大量の汗をかいている。
     
あたしのために来てくれたの?

それにしてもこの人すごくかっこいい。

黒髪の短髪で帽子から見える目はきりっとしてるし。


「あ、移動しますか?ここも人多いでしょ?」

「いえ、友達が花火見てますから」

「気分は大丈夫ですか?」

「少しましになりました。ただ・・・音がちょっと」


確かにここでも音がきつい。

あたし低音の音に弱いのかな。

でも警備員さん

自分も忙しいのにあたしのとこに来てくれてほんと嬉しい。

少し心細かったから。それでも警備員さんは移動しましょうとあたしの体を起こしてくれた。

彼の腕につかまる。たくましい腕だな。移動する場所を一生懸命探してくれている。

あ、あそこにベンチがある。花火は見えないけれどまだあそこならましかなと思い、

声を掛けようとしたら警備員さんのほうがベンチを先に指さしてくれた。

あたしを支えて彼はそこまで歩いてくれた。


「ここなら少し音しのげると思うんだけど・・・」

「あ、ありがとうございます。あのお仕事に戻ってください。あたしは大丈夫ですから」


あたしが立ち上がって警備員さんにお礼を言うと警備員さんはあたしを座るように促し、

自分も座って帽子を脱いだ。やっぱりかっこいい。でもなんで?仕事はいいの?


「あの・・・仕事いいんですか?」

「君を一人にしてられないよ。ってのはかっこいいけど実は口実。座りたかったんだ俺も」





  


  side Akira