歩いてようやく花火会場に着く。あーもうやっぱり人だらけじゃん。

しかも大半カップルだし。あたしひがみすぎかな。

友達の話を聞くこともなんだかうっとおしく感じ、周りを見ながら歩く。

元彼とかに会ったらどうしようとか思いながら。


「すずカキ氷食べない?」

「ああ。あたしいいや」


友達がカキ氷を買う。カキ氷か。

夏らしくていいな。でもいらないな。

なんかほんと今日は気を遣うよ。

あたしって本当に心から気を許してないと常に気遣ってる状態だからな。
  
それにしても浴衣の子多いな。暑くないのかな。

そんなに花火っていいのかな。


「おいしいよ。すずも食べてみな」

「あ、うん。いただきます。おいしいね」


手渡されたかき氷を口にする。うん。おいしい。おいしいけど終わり。

 あーもう人がいっぱいで気分悪くなりそう。

しかも今日天気そんなによくないし。
   
花火あるのかな。あたしたちは花火が見れる場所まで移動した。

警備員さんが誘導してる。この暑いのにご苦労さまだな。


「この辺りで見る?」

「どこで見れるんだろうね?」

「この辺り見えるのかな」


立ち見で見ることになる。あー最後まで持つかな。ほんとに人多いな。

どこを見てもカップルだし。もう絶対に来年は来ない!ってかもう一生来ない。

こんな人ごみ。花火が始まる。え?見えないよ。

あたしたちの場所は背伸びをしないと見れない場所だった。マジで?

音だけがどんどんと響いているのにかすかにしか見えない花火。

あたしはこんなものを見るためにこんな人ごみに来たんじゃないのに。


「すず、見える?」

「んーかすかに見える」

「あたしもあんまり見えないよ」

「ほんと場所失敗だね」


ってか来たことが失敗だよ。

しんどいよ。暑いよ。帰りたいよ。花火見れないよ。

心の中は愚痴の塊。

あたしはほんとにしんどくなってきて友達の輪を抜けた。





  
 

  side Akira