An opening of such a love


〜Akira〜




暑い、あービールが飲みてえ。さっさと帰りてえ。暑い。

なんで俺はこんなとこで人の誘導なんかしなきゃいけねえんだ。

そもそも花火大会なんて喜んでんのはいちゃいちゃカップルと小せえガキだけだろうが。

何が悲しくてそんなやつらの誘導しなきゃいけねえんだ。

俺は小日向陽(あきら)。27で小さいながらも警備会社に勤めている。

毎年、この時期になると俺の会社はこの暑い最中借り出される。

しかし、それにも特権というものがあった。

彼女がいれば、もしくは家庭があれば休暇が取れるという俺にとっては

まったく持って最悪の特権だ。


「はい。小日向は今年も出勤と」

「え?マジっすか?」

「マジに決まってるだろ?お前彼女いないんだから」


花火大会の一週間前、家庭持ちの上司が俺に言う。

いいよなあんたは休暇が取れるんだから。大体借り出されるのは決まってる。

もう花火なんかに興味のない40〜50代のおっさん5,6人に

まで一度も彼女なんていたことのない後輩の神童。

それからどっかの派遣と俺。

毎年お決まりのパターンだ。


「お前は毎年、夏まで彼女もたないよな。

いっそのこと出会い系にでも登録してみれば?」


そうやって鼻で笑うのは俺と同期の田辺。こいつはいつも休暇を取れるからな。
 
毎年連れてく女は違うけど。俺だってもてないわけじゃねえんだ。

ただいつもこの時期になるといないってだけで。

ほんとこいつの言うとおりいっそのこと出会い系で

その場しのぎの女でも作ろうかと思ったことだってある。

でもそんなことするくらいならまだ出勤のがいいかなって思うこともあるけどな。


「・・・小日向さん、今年僕欠勤で・・・」
 
「はぁ?」

「・・・彼女できたんすよ」


マジかよ。神童今年は欠勤?てかお前の彼女になるやつなんてどんなやつだ?

後輩のことをこんな風に言うのは悪いと思うがデブめがね。
   
悪いけど俺はお前には勝ってるぞ。

そう思ってると神童が彼女の写真を見せてきやがった。

かわいい。ありえねえ。

なんで神童にこんなかわいい彼女がいるんだ?天変地異の前触れか?

とりあえず、今年はおっさんばっかってことか。

あー派遣もいるな。はあ。彼女ほしいぜ。





 

          
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