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うちわ作り。可愛い助っ人現われる☆



昼食を食べ終わり、明海、卓真はさっそく作業にとりかかった。


「もう、夏も終わりだね」
「そうだね」
「この夏はいろんなことがあったなぁ」


縁側で柚と夏柘は2人っきりの世界を作っていた。


「来年の夏も・・・一緒にすごしたいね」
「うん」
「こらー!!!お前ら2人の世界作ってんじゃねえよ!!さっき係決めただろうが!」

「だってまだ2人とも絵描けてないじゃない」
「さっきやっぱ貼り絵にしよう!って言っただろ!」
「え?」
「言った!!聞いてないお前らが悪い!!柚は土台に色画用紙を貼る!夏柘は切る係!
はい作業開始!!柚はこっち来い!!」


ちょっと怒り気味の圭に連れて行かれて、柚は夏柘と引き裂かれてしまった。机の上では明海
が太陽の絵を色画用紙にいっぱい描いて、卓真はASAHIと色画用紙に描いていた。


「はい!お前はこれ!!」


柚は大量の色画用紙を渡されてうちわの形に切っていく係になった。ちなみに気が散らない
ようにと夏柘とは隣の部屋で。横には見張り兼同じ仕事をする圭が座った。


「ねぇ圭にい!いつ決まったの?」
「お前らがいちゃつきながら飯食ってるときだよ!!ほら手動かす!!」
「はい・・・でも・・・夏柘は?・・・」

「お前4歳児の明海にはさみ持たせる気か?」
「・・・すいません」


いつもの優しい圭とは違い、ぴりぴりしていた。それでも慣れたような手つきでうちわ形に
色画用紙を切っていく。


「圭にいうまいね」
「あ?あー学祭でやったからな」
「ふーん」


時計の針の音が聞こえる。それだけ静かだった。ちなみに隣の部屋では・・・


「何かこれ楽しいなぁー!!」
「これ自由研究にしようかな俺」
「あ、夏柘それいいアイデアだな!俺もそうするかな!帰ったら地獄だよなお互い」

「え?俺、あと自由研究だけだけど・・・」

「あ、そっか・・・え?」
「毎日帰ったらやってたからさ」
「えー!!やべぇ俺何もやってねえよー!!!!!」


和気藹々と楽しげにやっているみたいだった。


「ふーやっと100達成!!」
「2時間か・・・時間かかりすぎだな!もっと早くやらねぇと間に合わねぇな!!
よしペースあげるぞ!!」
「えー休憩は?」

「なし」

「えー!!」
「文句あるか?」
「・・・ないです」


圭のスパルタは時間が経てば経つほど増してきた。


「さ、そろそろ貼り付けていくかな」


開始から4時間。圭がそう言った。そして4時間ぶりに柚は夏柘に再会でき・・なかった。


「よし!!じゃお前ここ任せるな!俺向こうでやってくるから!」
「えー私も・・・」
「これやっとけ!!」
「・・・はい」


圭の完全なる迫力に負けて柚はしぶしぶ一人で作業を続けた。


「お前!これはないだろう!」
「えーでもおいしいかも」


隣の部屋では楽しそうな声が聞こえる。柚は隣の部屋に行こうとしたがまた圭に怒られると
思い、やめた。


「それにしても、ほんとこの夏はいろんなことがあったなぁ・・・」


柚は寂しさを紛らすためこの夏の思い出を振り返っていた。


「お風呂が使えなくなって、銭湯に行ったら卓真がいて、銭湯を再生することになって、
夏柘に出会って・・・」

「おーい!」

「嫌いな牛乳が飲めるっていってもフルーツ牛乳だけど飲めるようになって、
夏柘が・・・好きに・・・」

「おい!!」


ごつん


柚の頭にゲンコツが落ちた。犯人は卓真だった。


「いたっ何すんのよ!」
「何度呼んだらお前は返事するんだ!」
「え?呼んだ?何?」
「どうせ夏柘との思い出でも振り返ってたんだろ!」

「(ギクッ)ち、違うわよ!それよりなんか用?」
「お、なかなか出来てるみたいじゃん。それよかお前宿題やった?」
「当たり前でしょ!もうほとんどやったわよ」
「マジで?!数学と社会と理科と英語とあと・・・・」
「国語?」
「そうそう!貸して・・・」
「嫌!!なんで貸さないといけないのよ!!」
「いいじゃん貸してくれよ!!」
「嫌!!さっさと作業しないと圭にいに怒られるわよ!!」
「いいじゃねえか」
「嫌!!」
「たーくーまー!!ゆーずー!!」
「やべ!じゃよろしくな!!」


後ろに恐ろしき悪寒がした卓真は急いで戻っていった。今日の圭はまるで恐ろしいスパルタで
ある。時間は止まってくれない。このままでは完成するのは不可能。そうみんなが思い始めた
頃だった。


「柚ちゃん、電話だよ」
「電話?」


中野宅に一本の電話がかかってきた。


「もしもし」
「あ、柚か?」
「お父さん!?」
「うちわどうだ?」
「んーまぁまぁかな」
「今日の夕方辺りお父さんもそっち行くからさ。お母さんと2人で」
「え?来るの?」
「うん。だから明海にいい子にしてろって伝えといて。じゃまた後で」


そう言うと父親は電話を切った。柚は父親の伝言を圭たちに伝えた。


「おーパパ来るのかー!!楽しみだな!!」
「じゃそれまでに仕上げないとな!!」
「無理―!!」


卓真と夏柘の声がハモった。そのあと圭のにらみに2人は黙り込んだ。そしてまた無言のまま
作業が再開された。


「中野さーん!!」


作業を開始して30分。来客がやってきた。中野が玄関に行くとそこには森がいた。


「おやなんだい?」
「あの子たちあんなに5人じゃ無理だろ?だからこの子たち連れてきたんだ」
「おや、柚ちゃーん、みんな来ておくれ」


中野に呼ばれて玄関に行ってみるとそこには20人程度の小学生がいた。


「児童館にいた子に声掛けたらみんなやりたいっていうからさ。あんたたちだけじゃ大変だと
思ってね!!」


森は児童館に行って子供たちを連れてきてくれたのだった。


「さ、こんなとこじゃなんだから、みんな入りなさい」


中野がそういうと小学生たちは中にぞろぞろと入って行った。


「わーすげー」
「うちわだー!!」
「すげえだろ?お前らも手伝ってくれるか?」
「やるー!!」
「じゃみんな好きなとこに・・・」


ちなみにここで兄ぶっているのは卓真。しかし・・・小学生たちはもう勝手に好きなとこに
行っていた。


「ねぇおにいちゃん何したらいいの?」
「ねぇねぇ」
「え?そうだなぁ。じゃおにいちゃんと一緒にこれ切って行こうか」


夏柘のところに5人のかわいい女の子。


「おねぇちゃんが手伝ってあげようか?」
「えーずるい私もやる」


明海に話しかけてきたのは5人の高学年の女の子。


「おねぇちゃん教えて?」
「僕も」
「私も」


柚のとこに5人くらいの男の子と女の子


「おにいちゃんやろー」
「やろー」


圭のとこにも5人。卓真は一人だった。と思ったら


「お前一人?かっこ悪いなぁ!」
「何だ?お前やってくれるのか?」

「・・・やだ」


冷やかし坊主が一人来て去って行った。さすがに卓真が不憫だと思った圭は人数を4人ずつ
に分けることにした。そしてうちわ作りは合計25人で行われた。