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オンボロ銭湯再生大作戦!!
「なんかさぁー客足減ったからってあんま営業してなかったらしい」
「だったら暖簾なんか出さないでよ!」
「いや商売は続けたいみたいだからさ!」
「おーい柚!オレもう風呂いいからフルーツ牛乳飲みたい!!」
「何でお風呂に入れないのに飲む必要があるのよ!!」
柚の苛立ちを無視するかのように明海は番台のほうに戻ってきて
フルーツ牛乳をせがみだした。
「おいお前いつまでかぶってんだ?」
「えっいやいつまた雷落ちるかわかんないから」
「なんですって!!」
「でお前あのフルーツ牛乳が飲みたいのか?」
「おう!あれは幻のニコちゃんフルーツ牛乳だ!あれは幼稚園でもよく話題になっているが
誰も飲んだことのないフルーツ牛乳だ!!」
「あんた・・・幼稚園で何話してんのよ・・・」
フルーツ牛乳について熱く語る明海。そしてこの実態でますますお風呂から遠のいた柚。
二人を見てある考えを思いついた者がいた。
「なぁお前らこの銭湯を復活させないか?」
そう言ったのは紛れもない番台に座っていた卓真。そして卓真は番台から降りてきた。
「は?何言ってんの?」
「だから俺らでこの銭湯を再生させるんだよ!!柚はどうせ一ヶ月家の風呂入れないんだろ?
その間は俺の家で風呂に入ればいいし、こいつはこのフルーツ牛乳が飲みたいんだろ?
手伝ってくれたら毎日飲ませてやるぜ!!」
「交換条件ってわけ?」
「悪くないだろ?」
「いいぜオレ大賛成!!毎日このニコちゃんフルーツ牛乳が飲めたら幸せいっぱいだ」
「んー」
「俺はいいと思うけどな。どうせこの辺りあんま銭湯ないだろし。明日から夏休みで部活も
ほとんどなしだしな!!」
ニコっと笑う卓真に何か騙されているような気がしてならないが柚はとにかく風呂に入りたくて
仕方がない。のでこの条件を呑むことにした。かくして柚・明海・そして卓真の銭湯再生大作戦 が実行されようとしていた。しかし、これが幸か不幸か柚に運命の出会いをもたらすなど今は まだ誰も知らない。
「最高―!!」
さっそく条件どおり柚は卓真の家に行き、念願のお風呂に入れてもらえることになった。
卓真の家はみんな優しくてお母さんもお父さんもこの条件を素直に喜んでくれた。
「さてと」
「なぁーほんとに毎日飲ましてくれるのか?」
「当たり前だろ!!男に二言はねえ!だからお前もしっかりと再生に協力するんだぞ」
「おう」
幸せそうにお風呂に入っている柚をよそに、卓真と明海は卓真の部屋で話している。
そのとき机の上にあった一枚の紙がふわっと明海の前に落ちた。
「ん?なんだこれ?」
「あ!そ、それは・・・」
「んーなになに?」
プレーボーイとはいえされど4歳児明海に漢字を読むことは不可能だった、が
「えっとあの、ほんと、ボロ・・・お金?」
「お前読めるのか?」
「んーあとは・・・?」
「なになに?」
「やべっ」
念願のお風呂に入れた柚が上機嫌で出てきた。
そして明海が持っていた紙をひょいと取り上げる。
「卓真くんへ
あの銭湯ほんとボロだからもし綺麗にしてくれたらお金払っちゃう。
おばさんは一ヶ月いないからその間によろしくね☆・・・だと?卓真―!!」
「まあまあその一割はお前に払うし、毎日風呂には入れてやるからさ」
あまり悪びれた様子を見せない卓真に対してまた鉄拳が喰らわされたことは
・・・・お分かりだろう。
「いてー」
「最悪」
「でもいいじゃねえかよ。お前一ヶ月風呂入れないよりましだろ!!」
「そ、それは・・・」
「もうお前らとは契約したからな!!明日から毎日来いよ!」
こうして柚と明海はオンボロ銭湯の再生に付き合わされることになった。
「いいじゃない社会に貢献することはいいことだわ」
「・・・・ばか母」
「なんて?」
「いや何も」
「とにかく頑張りなさいね」
家に帰ってその事情を母親に話せば反対されてこの話はお流れになるだろう。と思っていたが
見事に期待はあっけなく裏切られ、母親は大賛成。明海もフルーツ牛乳に踊らされ完全に卓
真の言いなり。柚は卓真にしてやられたと思い、明日また鉄斎を・・・と考えていたが
まあ風呂の確保は出来たということで彼女も納得がいったようだ。
「明日からオレ毎日フルーツ牛乳飲める☆」
「あんたねーそんなに飲んだらお腹こわすわよ」
「いやお腹こわそうがなんだろうがオレは飲む!!」
「でもあんなオンボロ銭湯どうやったら再生できるんだろ?」
明海と柚の寝室は同じである。二人は明日のことを考えているが考えはまったく間逆だった。
さてもうそろそろ4歳児の明海くんはおねむの時間である。
「ふぁーあ」
「あっごめん。そろそろねよっか明海」
「おう!明日のためにもう寝るぞ!」
「うん。まっなんとかなるわよね!じゃ、おやすみなさーい」
今日はお疲れの二人。さぁ明日から何が待ち構えているのだろうか?
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