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番台にいたのは・・・?



覚悟を決めて銭湯の暖簾をくぐった二人。息を呑んで靴を靴箱に入れた。


「なぁ柚―ほんとに行くのか?オレフルーツ牛乳飲めないなら嫌だぜ」
「当たり前じゃない!そんなもんあとからいくらでも飲ましてあげるわよ!!
 とりあえず今はお風呂よ!お風呂!!」


勇気を出してゆっくりとドアを開けた。一応電気はついていた。


「いらっしゃい!!」
「あーあんた!?」
「おっ、ゆずじゃねえか」
「何であんたがここにいるのよ?」
「柚―知り合いか?」
「知り合いも何も!!」
「恋人だよなぁ!!」
「ばかー!!」


明海と番台の少年が吹っ飛ぶくらいの叫び声で柚は叫んだ。ちなみに番台にいた少年は?


「ちょっとあんたわけわかんないこと弟に吹き込まないでくれる!!」
「いいじゃねえかよ」
「よくないわよ!」
「ふつつかな姉ですが・・・」


ごつんっと深々とお辞儀をする明海に対して
また柚の鉄拳が喰らわされたのは言うまでもない。


「いてえー」
「あんたがばかなこというからでしょ!!」
「だってこいつが恋人とか言うから」
「俺はこいつじゃねえよ。淡路卓真。
お前のねえちゃんとは同じクラスで同じ部活で出席番号も一緒っていうくされ縁ってやつかな」
「どうでもいいのよ!そんなことは!!あたしは何で卓真がここにいるかって聞いてるの!!」
「オレは相河明海。女みたいな名前だけど立派な男だし、ガールフレンドもけっこういるぜ」


吠える柚もあたかも無視して卓真と明海は自己紹介を勝手にやっていた。


「いいかげんにしなさいよー!!明海!!」
「やべっ」
「明海次また余計なこと言い出したらげんこつだからね!!」
「ほーい」
「で何度も聞くけど何で銭湯に卓真がいるの?」
「あー俺さここの手伝いしてんだ。知り合いの人が今旅行行っててその間だけだけど」
「手伝いってあんた客誰もいないじゃん・・・」


カーカーとカラスが鳴いてもおかしくないくらいガラ―ンとしている。
客なんて来る気配はさらさらない。


「あんたまさかそれでお金とかもらえるわけ?」
「えっ?!」
「バイトでしょ?」
「そ、そんなことよりお前こそ何しに来たんだよ?」
「決まってんでしょ!!お風呂入りに来たのよ!!でも卓真が番台なら帰るわ」
「ばーかお前の裸見たら俺の目が腐るわ!!」


その言葉にぶちっと何か音がした。明海は恐怖を覚え、持ってきた洗面器を頭にかぶった。


「だれがー腐るって??」
「やべっ!?」
「卓真あんたの口が言ったのよね?」
「い、いや俺は何も」
「あんた番台から降りてきなさーい」
「いやだよ!!」
「なんて?もう一度言ってみなさい!!降りてくるわよね?」
「・・・・」


卓真が言葉を返さないから、柚が強行突破で番台のとこに行った。
そしてごつーんと大きな音がこの場にけたたましく鳴り響いた。


「いてー」
「あんたが余計なこと言うからでしょ!!」
「あーいて!で結局どうすんの?入るの?」


卓真が頭を抑えながら言った。ぽんと番台から降りた柚は、


「んーあんたが見ないなら入っていくかな。うちお風呂壊れて一ヶ月入れないのよね」
「マジで?!あっでも・・・」
「でも何?」
「おい柚!!ここ気に入ったぜオレ!見ろよ!幻のフルーツ牛乳がある!!」


明海が洗面器を頭にかぶったまま目を輝かせて言った。


「はあ?あんたまだフルーツ牛乳のこと言ってんの?」


そういいながら柚は明海のそばに近づいた。するとぱっと目に入った光景が・・・


「卓真―あんたこんなとこに入れると思ってんの?」


番台のほうに振り向いた柚の顔は鬼さながらだった。


「だからーでも汚くて入れないかもしれないって」
「はぁー?」


またけたたましく柚の叫び声が響いたのは言うまでもない。
いつになったらお風呂に入れるのか?二人の行方は??