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内装班と客引き班 あみだくじの行方は?
「じゃとりあえずあと2週間くらいで何とかするアイデアが必要だな」
卓真もなんとか元気になり、圭の仕切りで本格的に話し合いが始まった。いろいろ計算をした
結果残り2週間で何とかしなくてはいけなかった。
「2週間で何かできるのかな?」
「んーま、とりあえず掃除は出来たし、もう内装班と客引き班に分けるのはどうだ?」
「あ、それいいと思います!手分けしたほうが早く終わりそうですからね」
圭の提案で2班に分かれることになった。班の分け方は平等にあみだくじ。圭は即席で
あみだくじを作った。5人は円になって座った。
「じゃ、内装班が3人と客引き班が2人な、じゃどれでも好きなとこ選んでくれ!」
圭がそういうと4人はそれぞれ好きな場所を選んだ。
「じゃまず俺からな・・・・はい俺は内装班」
「次オレがいいぞ」
「じゃ、明海な・・・お!明海も内装班か」
「圭と一緒か!オレ頑張るぞ!!」
「じゃ次は・・誰にする?夏柘にしよか・・・夏柘は客引き班だな」
「じゃ、私は?」
「柚は・・・内装班か。いやでもこれだったらここの責任者がいないな」
「じゃ私が卓真と変わろうか?」
「いや夏柘は内装行けよ!俺と柚が客引きやるからさ!!」
「分かった」
「(卓真のバカ!!)」
こうして班は圭、明海、夏柘が内装班。卓真、柚が客引き班になった。
「じゃ、班も決まったことだし、とりあえず今日までは全員で話し合って明日からは班で
行動するとしようか」
「おう!!」
「じゃ今日はどうしますか?」
「まず!客を集めるには何が必要だと思う?じゃ夏柘から」
「え?んー人目を引くようなことをするとか?」
「そうだな。じゃ明海!お前ならどうしたらいいと思う?」
「んーなんかもらえるとかどうだ?オレは毎日フルーツ牛乳が飲めなかったらこんなことして
ないぞ」
「なかなかいいこと言うな。じゃ柚!お前ならどうだ?」
「んーあ!そうだ期間限定とかで何かサービスするとかは?」
「それもいいかもしれないな」
今日の話し合いは圭がびしばしと仕切りを入れてくれたのでいい感じだった。
「じゃ!こうしない?何日間かフルーツ牛乳を無料で提供するの!試飲してもらったりすれば
きっとこのおいしさがわかると思うんだけど」
「それいいかもしれないね!フルーツ牛乳は親戚の人から仕入れているから協力してくれると
思うし」
「オレ毎日来る!!」
「明海はお客さんじゃないでしょ」
5人でいる時間がすごく幸せかもしれない。柚はそう思った。でも一番は夏柘がそこにいる
から。昨日よりも今日よりも次の日になればどんどん距離が近くなっていく。それがすごく感じ
られた。
「よし!!とにかく目玉はそれでいこう!!じゃ後は内装は俺と夏柘と明海で。客引きは柚と
卓真で話し合ってやってこうぜ」
「うん!!」
「柚卓真には気をつけるんだぞ!!次は○○ミちゃんになるかもしれないぞ」
「おい明海!」
「なんだー?」
卓真と明海のやりとりをみて圭、柚、夏柘が笑った。柚がふと夏柘を見ると目があって一緒に
また笑う。いつまでもこのメンバーでいたいな・・・そう柚はまた思った。
「やっぱビラ配りがいいんじゃね?」
「ビラって作るの?」
「そうだなーあ、でも柚めっちゃ絵へただよな!なんせ美術・・・」
「それ以上言ったらなぐるよ!!」
柚と卓真はどうやったら客がたくさん来るか話し合っていた。でも本当は夏柘と一緒がよかっ
た。今日の今日だから正直卓真に警戒心がないわけでもない。が当の卓真はいつもと何も
変わらない。その態度に少し安心した。そして、少し離れたとこで話してた夏柘のほうを見た。
夏柘は真剣に話し合いに参加していた。
「どうだ?話だいぶ出来たか?」
「んーまあまあかな」
「そっか。外に出て考えてみるのもいいかもしれないぜ!ま、今日は早めに解散しようと思うか
ら、明日になってからだけどな。そうだ!柚ちょっと」
数時間すると圭が柚と卓真のところにやってきた。そしてこう言ったあと柚をこそっと呼んだ。
圭は周りに聞こえないように柚に耳打ちした。
「今日、お前、夏柘のとこ行くんだろ?ついでに晩飯一緒に食べてこいよ。夏柘にはさっき
言ったし、おばさんにも言っとくからさ」
「圭にい」
柚はそれを聞いて顔を赤らめた。圭はやっぱり笑顔でピースサインを返す。柚はドキドキが
止まらなくなった。
「あいついつも一人で飯食べてるらしいから作ってやれよ!」
「で、でも私料理できない・・・」
「なんとかなるって!頑張れよ」
「でも・・・」
「じゃそろそろ今日は帰ろうぜ!卓真、今日夏柘の代わりに俺戸締り手伝うわ」
「オレもやるぞ!」
「え?なんで?」
「俺一応一番上だからな!たまには夏柘を先に帰らせてやろうぜ!」
「・・・いいっすよ」
「じゃ決まりな!柚、夏柘!先に帰れよ!気をつけてな!」
「気をつけてなー」
圭と明海は笑顔で2人に言った。圭と明海のバックアップで柚と夏柘は目を見合わせて
その場を後にした。
「なんかよかったのかな?」
「いいと思うよ!それより今日一緒にご飯食べてくれるんだ?」
「うん。でも私・・・料理できないんだけど」
「一緒にやろうよ!本とか見て!じゃ買い物行こうか」
柚と夏柘は銭湯を後にし、歩きながら話していた。そして夏柘は柚の手をあの遊園地の時の
ように引っ張り、スーパーに向かって走った。
「圭さん!聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「何で今日・・・」
「(やべ気づいたかな?)」
一方銭湯では卓真が戸締りをしながら圭に問いかけた。明海と圭は顔を見合わせる。明海は
柚が夏柘を好きなことを知っているので圭と2人で協力していた。
「何で今日・・・俺○○えもん見たんでしょうか?」
ズコッ
明海と圭はその場にこけそうな気分になった。
「圭、あいつなんであんなにバカなんだ?」
「いや、生まれつきじゃないのか?」
「オレあんなんには絶対なりたくないぜ」
「じゃとりあえず、材料はこんなんでいいよね?」
「うん。ミートソース買ったし、パスタも買ったし。完璧」
今日の2人の献立はミートソーススパゲティ。これなら本を見なくても作れるだろうと2人で
話して決めた。柚と夏柘は買い物中も帰り道もずっと手をつないでいた。
「どうぞ」
「おじゃまします」
2人が手を離したのは夏柘の家に着いたときだった。
「じゃ、私はパスタをゆでるから夏柘はソースをお願いね」
「了解!」
「焦がすなよ!」
「固いの食べたくないからね!」
冗談を交わし、笑いながら料理開始。さながら新婚生活を感じさせられるような気もしたが、
彼は小学校5年生。彼女は中学2年生の幼い2人だった。
「できたー!!ゆで具合も完璧!」
「こっちも出来たよ!焦げはありません!!」
「じゃ食べよう」
スパゲティをお皿に盛り付け、ソースをかけて2人の合作ミートソーススパゲティの完成。
「いただきまーす!!」
「おいしい!」
「ほんとすごくおいしい」
2人は顔を見合わせた。お腹がすいていたのもある。失敗していないからでもある。でも一番
は二人で作ったからおいしい。柚はそう思った。夢中で食べたあと片付けて、2人はソファに
座った。
「あっそうだ!これ」
「ありがとう」
夏柘は柚にCDを渡した。柚は嬉しそうにそれを受け取った。
「柚・・・」
「ん?」
「俺、柚に言いたいことあるんだ」
「言いたいこと?」
「うん。でもこれを聞いて意識したり、そういうのしないでくれる?」
「うん。分かった」
「今のままでいてくれる?何も変わらずに」
「うん」
「絶対約束守ってくれる?そして、誰にもまだ言わないでくれる?」
「どうしたの?うん」
夏柘が真剣な顔で柚に言う。そして夏柘は深呼吸をして・・・こう言った。
「ごめん!もう俺のこと好きにならないで」
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