今日の気分は最悪。だって今日は私の誕生日。
それなのに、あいつは何?予定があるから今日はいない?
愛する彼女の誕生日でしょ?あたしに一人で過ごせって言うの?もう嫌。
あんな彼女の誕生日も祝ってくれない男なんてもう知らない。いいわよ。
今日っていうあたしが生まれた記念日を精一杯祝ってやるんだから。
いつもは着ない白のワンピース着て少しメイクだって頑張ってやるんだもん。
我ながら今日のあたしはかわいいじゃない。
お気に入りのカバンを持っていざ、出発。ヒールの音が響く。最高に晴れてるしもう完璧。
少しショッピングしてお腹が空いたから大好きなレストランに入ってカルボナーラを注文する。
おいしそう。そうだ、友達でも誘おうかな。メールを打つと返ってくる返事はみんなダメ。
今日は何の日?そりゃメールだってみんなくれたけどやっぱり一人はさびしいんだから。
あ、やばい泣けてきたよ。何で誕生日に一人で過ごさなきゃいけないの?
そう思ってると電話が鳴る。
あいつからだった。もう!あんたのせいだからね。
こんなかわいい彼女の誕生日より予定を優先するなんて。
「・・・はい」
「何してた?」
「・・・一人で誕生日祝ってた」
「むなしいやつ」
「うるさい」
「今どこにいる?」
「・・・いつもの店」
「家帰って」
「は?」
なんであんたに指図されないといけないの?
とはいえここにいても仕方ないからパスタを半分だけ食べて店を出る。
こつこつとヒールの音を響かせて家の鍵を開ける。
は?何これ?テーブルの上には3つの封筒。左の封筒を手に取ってみる。
はずれ?真ん中の封筒を開けてみる。
バカ?どう読んでもあいつの字。むかつく。何がバカよ。最後の封筒を開けた。
「引き出しの奥を見ろ?」
引き出し?引き出しってどの引き出しよ?とりあえず一番近い引き出しを開けてみる。
奥までじっくり見てみるけど何も変わりない。
この引き出しじゃないのかな。洋服ダンスはありえないし。
ふと目についたのは机の上のあいつが買ってくれた小さな和箪笥。
使い道なくて何も入ってないけど。あれ?何か入ってる。これって・・・
「気付いた?」
「用事だったんじゃないの?」
「用事だよ。そこに入れるための」
「・・・ずるいよ」
「なんか変わった感じでいいだろ?」
引き出しの奥には指輪ケース。それを開くとキラキラ光るダイヤモンド。
それをあいつは手に取りあたしの薬指にはめる。
「結婚しよ」
ずるいよ。何それ?『はい』としか頷けない。
世界で一番愛しいあいつがくれた誕生日プレゼントは引き出しの奥に隠した婚約指輪だった。
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