後編



おいしいオムライスを食べて店を後にする。あーお腹いっぱい。

ちゃんとこぼさずに食べれたし大満足だぁ。

芯悟くんとまた手をつないで映画館に向かう。

芯悟くんが見たいって言ってたスポーツ系の映画を見ることになってる。

本当はあたしスポーツとかの映画ってあんまり見たことがないんだけど

とにかく寝ないようにだけはしなくっちゃ。


「お前、寝るなよ」

「ね、寝ないもん」

「はいはい。じゃあチケット買うか」


並んでチケットを買う。

あたしも出すって言うのに俺が出すって芯悟くんが無理やり払っちゃった。

お金を返そうとしても受け取ってくれないし。

どうしよう。また後で返そうかな。

空いている席に座る。

こんなに密着したっけ?映画館って。ドキドキが止まらない。

さっきまで芯悟くんと手をつないでたはずなのに、

抱きしめられたこともあるのになんだかすごくドキドキする。暗いからかな。


「もう始まるみたいだぞ」

「うん」


あたしの気持ちとは裏腹に映画が始まる。どうしよう。芯悟くんの腕が当たってるよ。

こんなの手つなぐよりも簡単なことなのに。

芯悟くんのほうを見ると真剣に画面に釘付けになっている。

あーどうしよう。もう寝ちゃえ。あたしはこのドキドキを抑えるために寝ることにした。

しばらくすると映画が終わった。立ち上がろうとすると芯悟くんが黙ったまま座ってる。


「芯悟くん?」

「悪いな伊咲、俺もうお前とは付き合えねえ」

「な、何で?」

「俺は映画を見ながら寝るやつとは付き合えねえんだよ」

「あ、ご、ごめんなさい・・・もう寝ないから・・・」

「じゃあな」

「待って、待ってよ芯悟くん!!」


「伊咲、伊咲」

「ん?し、芯悟くん。ごめんなさい。もう寝ないから別れるなんていわないで」

「おい?誰が別れるんだよ」

「だって、芯悟くん映画を見ながら寝るやつとは付き合えないって・・・」

「確かに寝るなとは言ったけど別れるわけねえだろ」

「え?」


映画はもうエンドロール。みんながちらほらと帰ろうとしてる。あたしの目には涙。

じゃああれはまたシャボン玉?

よかった。

人がいっぱい見てるにも関わらず、あたしは安心してかとにかく泣き喚いた。

だって芯悟くんに別れるって言われたんだもん。

でも芯悟くんはあたしの頭を撫でてくれる。

片手はぎゅっと手を握ってくれてる。このぬくもりが本当なんだね。

でももう絶対に映画見ても寝ないようにしなきゃ。


「悪かったな。俺の見たい映画につき合わせて」

「ううん。あたしが悪かったんだよ。寝ちゃったんだもん」


あたしが落ち着いたので映画館を後にする。

歩きながら話してるけど、芯悟くんは何も悪くない。

だってあたしが寝ちゃったんだもん。

彼女なのに好きなひとの好きなものを見てるときに

寝ちゃうなんてあたしは彼女失格かもね。


「今度はさ一緒に何見るかとか何するかとか決めようぜ。

二人のしたいことすればどっちも負担にならないだろ?

寝たことは気にしなくていいし。

俺も自分の見たい映画を優先させて悪かったよ」

「芯悟くん・・・」


なんでこの人はこんなに優しいんだろう。

笑顔でそういわれたらまた涙が出てきた。

本当にこの人を好きになってよかった。

もっと一緒にいたいからあたしたちは海が見える公園に足を運んだ。

人もまばらで一番海が綺麗に見える特等席は空いている。

あたしたちは缶ジュースを買ってそこに座った。

缶ジュースを飲みながら話す。


「ほんとそれにしてもお前は勘違いがすごいよな」

「だって・・・リアルだったんだもん」

「まぁさすがにもう慣れてきたけど、そろそろ本物の俺を信じてほしいな」

「信じてるよ」


信じてる。でもね、時々まだシャボン玉じゃないのかなって思うんだ。

だってずっと片思いしてて朝一度だけしか話しちゃいけないって言い聞かせて、

それから彼女だっているって思ってた

そんな芯悟くんがあたしのこと好きって言ってくれて

彼氏になってくれて、こんなに夢みたいな幸せなことがあっていいのかなって思うんだ。


「じゃあもっと信じてくれるようにおまじないしてもいい?」

「おまじな・・・」


ちょ、ちょっとどういうことですか?

あんまりにも唐突でビックリして心臓が止まりそう。

芯悟くんの唇があたしの唇に触れた。これは反則だよ。

だってあたし顔がりんごみたいに真っ赤になっちゃう。

誰も見てないけど、それでもドキドキがまた止まらないよ。


「シャボン玉の中じゃするなよ」

「・・・し、芯悟くん?」

「これでもうシャボン玉で余計なもの見ても俺を信じろよ」

「・・・はい」

   
あたしが飲んでいたりんごジュースの味がした。

あーこれからもうシャボン玉の中で彼に会うことはないかもしれないな。

だってあたしは芯悟くんの彼女なんだもん。





 





web拍手リクエストでいただきました☆ハルシ様ありがとうございました^^
「シャボン玉」のラブラブが見たいというリクエストでございましたが
ご希望に添えたでしょうか?
苦情受けますので何でもおっしゃってください!!
今回は伊咲視点でお送りしました。
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