最初はなんか気にくわない感じだったけど、

いつしか俺は彼女が好きになっていた。

でも彼女とは話したことがない。

でも、よく目があっていた。

もしかしたら彼女も俺のこと気になっているのかもしれない。

そんなうぬぼれも抱いたこともあった。

友達にも話した。一番仲のいい王子様の

都築清弥にだけはなんとなく話してはいなかったけど。



小雨降る6月。

俺とそいつが廊下を歩いていると彼女が目に飛び込んできた。

それに気がつき、そいつは俺に言う。


「なぁいるぜ。話してこいよ」

「いいって。余計なことすんなよ」

「照れんなって」


そいつの言葉を遮って彼女を見る。

もともとそんなに友達が多いわけじゃない彼女。

一人で居る事が多いし、

学校サボりがちで彼女に会えるのは2日ってこともあった。

今週はけっこう彼女に会えた。

俺はじっと彼女に目で語りかけた。いや、目で会話した。

それでよかった。

別に付き合いたいとかそんな風に思っていたわけじゃない。

彼女はけっこうモテる。

謎な雰囲気がいいなんて、よく男どもから聞いていた。

でもまさか清弥が彼女のことを好きだったとは

・・・予想外の展開だった。


「篤貴、俺 好きな子がいるんだ」

「お、とうとう王子様も恋に落ちたか」

「茶化さないでくれよ。でも本当に彼女が好きだ」

「誰なんだよ。王子様の心を射止めたのは」

「クラスメートの槙原陽菜さん」


清弥の言葉を聞いた瞬間に俺は氷ついた。

俺が瞳を合わせていた彼女の名前。

まさか清弥が同じ人を好きになるなんて思ってなかった。

どうしたらいいんだ?

俺も彼女が好きだといえばいいのか?

いや、そんなこと出来ない。

仮にも俺の中で清弥は大事な友達だから。

だからここでゲームセットだ。


「告白しようと思うんだ」


そう言った清弥の言葉に俺はただ頷く。

それから俺は学校に行かなくなった。

さすがに彼女に会うのは辛い。

せめて夏休みが終わるまでは彼女には会いたくない。

そう決めて学校を休み、バイトに明け暮れる毎日を送った。



夏休みが明けて、彼女に会った。

彼女は俺を見ている。でも俺は彼女を見ない。

見てはいけない。清弥を応援することにしたから。

自分の中の恋心を思いきり封印した。

彼女を見ないこと。それが俺の約束。

そしてもう彼女を好きにはならないこと。

それが俺の・・・俺の決めたこと。