最近気になることがある。

彼と目が合わなくなった。なんでだろう？

前まではいれば必ず目があって、じっと見て、で逸らす。

そんなことが日常茶飯事だった。

特別仲がいいわけでもないし、話したことなんてない。

それでも目が合ってるときは何か他人とはとても思えなくて

距離が近くに感じられた。

あたしはそれが嫌いじゃなかった。

「佐藤来なくなったね」

夏休みに入るちょっと前から彼は学校に来なくなった。

理由はいろいろ飛び交っていたけどみんなうわさ程度のもので

どれも真実とはかけ離れているような感じだった。

「犯罪を犯したとか？」

「いや、案外子供つくったとかじゃない？」

あたしのグループはうわさ話が大好きでひっきりなしに

あいつのうわさ話でもちきりになる。

明らかに彼とはかけ離れているような気がするけど。

「ねぇ陽菜はどう思う？」

「え？」

「あいつ来なくなったじゃん」

「んーさぁわかんないや」

適当に返事を返す。

友達といるのはそんなに好きじゃないから。

彼と目が合うようになったのは春のこと。

彼の隣には学年の王子様的存在の

都築清弥くんがいる。

彼はとてもかっこいいし愛想もいい。

都築くんを嫌いな子はきっといないんじゃないかな。

でもあたしが瞳を合わせたのは

その隣にいた彼だった。

最初はただの偶然かなって思ってたけど

それからはほとんど毎日彼の視線を感じるように

なっていた。

6月にもなると彼と瞳を合わせることが

一番の日課になっていた。

ただ瞳を合わせるだけのことなのに

いつしか楽しみになっていた。

そしてとうとう決定的な言葉を聞いてしまった。

そう小雨降る6月のことだった。

めずらしく彼は都築くんとは違う男の子と

一緒に行動していた。

あたしとは反対側から来る彼。

ドキドキしながら彼を見ようとしたら

彼と友達の会話が聞こえてきた。

「なぁいるぜ。話してこいよ」

「いいって。余計なことすんなよ」

「照れんなって」

間違いなく言葉が耳に入ってきた。

その後すれ違いざまに瞳を合わせた。

何かいいたげな瞳をしていたけど

結局話すことはなかった。

あたしはもう彼が好きになっていたのかも

しれない。

だからこそ彼が急に学校に来なくなったことは

ショックで仕方なかった。

7月に入る前に突然彼は学校に来なくなった。

風邪でも引いたのかと思ったけれど

1学期はもう姿を現すことがなかった。

そして夏休みがあけた。

彼はまるで何もなかったかのように学校に来た。

心配したんだって言いたい。

でも伝えられない。

だから瞳で伝えようと思った。それなのに・・・

彼はまったく瞳を合わせてくれなくなった。

どうして？まるで意図的に自分から避けるように

あたしを見なくなった。

わからない。胸がくるしい。

それからすぐのことだった。

あたしは一人の男の子に呼び出された。

相手を聞いてびっくりした。

それが・・・あの王子様の

都築清弥くんだったから。