あれから数ヶ月、今日はおにいちゃんとはるきさんの結婚式。

真っ白なウェディングドレスに身を包んだ彼女は天使のように美しかった。

私の左手には薬指のリング。慧くんがくれたもの。

次はあなたたちだねって笑顔ではるきさんが言ってくれた。


私はあの後すぐに辛くて家を出た。

慧くんは一緒に住もうと言ってくれて私達は一緒に住んでいる。

いつもそばにいてくれた。。辛いときも、楽しいときも、悲しいときも、嬉しいときも。

でも私はいつも苦しかった。おにいちゃんには幸せになってもらいたい。

そう思って出した結論がこんなにも辛すぎるなんて。

誰にも責められるわけじゃない。でも思い合う二人を引き裂いたのは私。

もしあのとき私がはるきさんを呼んでいれば二人は・・・


「はるき幸せか?」

「うん」

「そっか。よかった」

「慧も幸せにね」

   
結婚式の会場で2人が交わした会話が私の中に大きく響き渡る。

お願い。そんな風に笑いあわないで。

本当は二人が並ぶはずだったかもしれないのに・・・。


「どうした?琉希、気分でも悪いのか?」


うつむく私を慧くんが気にかけてくれる。

こんなにも優しい彼の幸せを私は壊してしまった。彼の思いを壊してしまった。

はるきさんまでもがドレスを引きずり駆け寄ってきてくれる。


「琉希ちゃん?大丈夫?」

「・・・ごめんなさい」

「え?」

「すべてごめんなさい!!」


私はその場で泣き崩れた。愛する2人を引き裂いて、

たとえ愛していたおにいちゃんの幸せを形にできても辛いだけだった。

この2人の幸せは形にすることができなかったのだから。


「琉希ちゃん、ほら笑って。今日は結婚式なんだから」


白い手袋をつけた細い手が私の前に差し出される。

私はその手を取り立ち上がる。そしてはるきさんは握った私の手を

慧くんに差し出した。慧くんはそっと私の手をとってくれた。


「琉希、俺らも早く結婚しような」

「そのときはちゃんと招待してね」

 
2人の言葉が重なる。こんなにこんなに綺麗な心を持った2人。

私はもうこれ以上2人を裂くことはできないと思った。そして私の手を慧くんから離し、

はるきさんに差し出した。2人は私の顔を見る。

私はうなずいて自分の薬指から指輪を外し、彼女の薬指にはめた。


「行きたいなら行けばいい。僕もひどいことをしたんだから」


白いタキシードを着たおにいちゃんがやってきて私達を見てそう言う。

私も大きく頷いた。そして慧くんはウェディングドレスの花嫁を連れ去った。


「おにいちゃん・・・」

「琉希、僕は何か間違っていたのかもしれないね。彼女を無理やり手に入れても
幸せにはできない。僕にできることは幸せを願う事なんだろうね」
                    


おにいちゃんは去っていく二人を見ながら私の肩に手を置いた。

私がおにいちゃんを好きでおにいちゃんの幸せを願うように。

おにいちゃんははるきさんの幸せを願ったんだ。


「琉希、ありがとう」

「おにいちゃん・・・」
 

私達兄妹は好きな人を幸せにすることはできなかったけれど後悔はしていない。

むしろよかったって思ってる。おにいちゃんはちゃんと私を妹として見てくれるし

私ももう恋愛感情は持っていない。だって私はもうちゃんと好きな人がいる。

今度の恋は必ず私自身でその人を幸せにできますように・・・。




〜END〜