雨だ。今日は降水確率10%だったのに。私は雨が嫌い。
髪がまとまらないし、傘差さないといけないから。
傘を持つとかさばるし、それに何より傘なのに役割を果たせず荷物が濡れたりする。
私の傘の差し方悪いのかもしれないけど決まって一ヶ所は濡れている。
でも今日はその傘もない。学校の貸し出し傘は全部出払っているといわれた。
学校から駅までは10分。走ればなんとかなるかもしれないけど…てか何で人いないの?
確かに私が遅くまで部室で絵を描いてたのが悪いかもしれないけど
だからって人の気配まったくないなんて…
誰かに傘入れてもらうことすらできない。
もう覚悟して濡れて帰るしかないか。そう決心したときだった
「どうしたんだ?」
あたしが声に反応して振り向くと顧問の先生が立っていた。
先生は私に近づく。
「傘わすれちゃったんです」
「貸し出し傘借りてこればいいんじゃないか?」
「全部出払っているみたいなんです」
「そうか」
先生はそう言ってカバンの中から一本の折り畳み傘を取り出した。
「小さいからあんま二人入っても役に立たないけど入ってくか?」
先生の言葉に耳を疑う。右手にあるのは黒い小さな折り畳み傘。
確かに二人入れば役割を果たせないだろう。
「…入れてもらってもいいですか?」
「…ああ」
ばざっと傘を開く。先生が先に入り、あたしが入る。小さい。肩に雨が当たる。
「小さいだろ。あ、お前濡れてるじゃないか。もっとこっち来い」
そう言って私の肩をぐいっと引き寄せる。
よく見たら先生のほうが濡れている。
「先生のほうが濡れてますよ」
「俺はいいんだよ。それよりお前が風邪引いたら大変だろうが」
優しいね。ねぇ今私がどんな気持ちかわかる?
心臓が割れそうに熱いの。先生の体が触れるたびにドキドキする。
好きなんだよ先生が。
誉められたくて部活頑張ってるの。
普通の傘じゃこんな至近距離にはなれなかっただろうな。
先生、私雨は大嫌いだけど
先生と小さな折りたたみ傘であいあい傘が出来るなら体が濡れても嫌じゃないよ。
今だけは先生と生徒じゃなくって
あなたの一番近くで鼓動を感じられる存在でいさせてください。
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