☆愛があれば大丈夫☆



最近、隼人が冷たい。寒いからお互い別々の部屋に寝ようとか言うのよ。
お堂が寒いのなんて今、わかったことじゃないでしょ。それに手を繋ぐのも嫌がるのよ。
もしかしてもうあたしのこと好きじゃなくなったなんてことないわよね?
そんなの許さないから。

あたしは離れるつもりなんてないわよ。ということでこうなればもう強行手段しかないじゃない。
なんとしても吐かせてやるわ。夜、あたしは自分の部屋へ。
隼人は依智の部屋へそれぞれ寝ることになっている。

おじいもおじいよね。
まったくお堂で修行っていうか生活しろって言ったのに
ちゃっかり隼人の口車に乗せられちゃって・・・。ここで黙っている未彩ちゃんじゃないわよ!!
依智がさっきお風呂に入るって部屋を出ていったのを確認したから今は依智の部屋に
隼人は一人。・・・このチャンスを逃すわけにはいかないでしょ。
そーっと物音を立てないようにあたしは依智の部屋の前に行き、勢いよくドアを開けた。


「隼人!!」
「な、なんだよ脅かすな」


隼人ってばすっかりくつろいじゃってベッドでごろごろしながら本読んでるじゃない。
でも一応手に持っているのはお経の本なのね。じゃなくって聞くわよ。絶対に聞くんだから。
あたしはベッドの上に乗って隼人の前に座った。隼人もなぜかぱっと座る。なんなのよ。


「隼人、あなたあたしに隠し事してるでしょ?」
「か、隠し事?そんなのしてないけど」
「いいえ。あたしの目はごまかせないわよ。急にお堂で一緒に寝たくないとか、あたしと手を
繋ぐの拒んだりとか・・・浮気してるでしょ?」

「う、浮気!?な、なんで俺がそんなことするんだ?」
「あやしいじゃない。まるであたしに触れるの嫌みたいなそぶりで。誰なの?相手は?
2組の早川さん?いやあの子はたしか彼氏がいたわね。じゃあ3組の平本さん?
彼女は何かにつけてモテルわよね。ま、あたしには適わないけど・・・じゃ・・・」


あたしが独り言をぶつぶつ言っている間にまさか隼人がそんな行動に出るなんて
思わなかったわよ。確かこれで2回目よね。押し倒されるの。


「な、なによ」
「お前ってさ・・・」
「?何?」
「無防備すぎだ!!」
「はぁ?」

「まったく俺がどんな思いで毎日過ごしてたと思ってるんだ?お前はやたらと薄着でくっついて
くるし、俺にも理性崩壊ってものがあるんだよ。お経を読んで邪念を払おうとしたけどそんな
ものは目の前の欲望にあっさりと壊されるし。でとうとう俺にも限界が来るかもしれないと
思ったから部屋を離れたんだろ。俺の好意を無にしてあげく夜這いか。分かった。
じゃお望みどおり愛してやる」


ちょ、ちょっと待った!こんな展開期待も何もしていないわよ。
隼人の顔がすごく近いんだけど。いやキスするときも近いけどなんていうの人がのっかかって
くる近さっていうの?じゃなくてほら、あの美容院で髪を洗ってもらったあとに美容師さんが髪を
拭いてくれるでしょ。その感覚っていうか。

てかさっきの愛してやるって何?いやいや愛してくれなくてもいいわよ。
あーそんなこと考えている間にもう隼人の唇が・・・。

ガチャ

「「「・・・・」」」

バタン

ドアが開く音がしてあたしも隼人をドアを見たらTシャツに半パンの依智が肩にタオルを掛けて
あたしたちを見ていた。そして1秒もしないうちにドアをバタンと閉めた。押し倒している隼人と
押し倒されているあたし。この状況をどう説明すればいい?
幸いにもまだ脱がされてはいないけど依智は完全に誤解したわよね。


「ど、どうしよう」
「・・・見られたものは仕方ないだろ。俺から誘ったわけでもないし。
お前からなら師匠も諦めつくだろ」

そうしてあたしのパジャマに手をかける隼人。ってさせないわよ。
あたしは近くにあったお経の本で思いっきり隼人の頭をたたいた。


「いってえ」
「それでも読んで邪念ぶっぱらいなさい」


あたしは心臓が破裂しそうなのを抑えてその場を後にした。・・・
部屋に戻るとあたしのベッドで依智が寝ていた。
机の上には音は立てないようにとご丁寧にメモつきで。